ネガティブ感情を減らす「イメージ療法」

こんにちは。「心のストレッチルーム」前田泰章です。

 

この心理療法は、名称の通りイメージをおこないネガティブ感情を修正していく方法ですが、「イメージが苦手~」という方もおられると思います。

そのような方に、ちょっとしたイメージ力UP方法を2つご紹介しましょう。

 

1つ目の方法は、目の動きを使います。
たとえば、昨日食べたカレーライスをイメージする場合、カレーライスという文字をイメージするのではなく、お皿に盛られたスパイスの香りただようカレーライスをイメージすると思います。

そのときに人は無意識に目が上を向きます。つまり、脳にアクセスしているわけです。

この「目を上に向ける」ということを意識的におこなえば、イメージしやすくなります。

 

2つ目は、実物を見る方法です。
近くにあるものを見てください。そして目をつぶり、その映像を思い出してください。

このようにちょっと前に見たものを思い出します。これがイメージするということです。

それがわかると、簡単にイメージできるようになっていくものです。
イメージというのは、見たことも聞いたこともないものを創造することだけではありません。思い出すこともイメージすることなのです。

 

さあ、イメージの準備は整いましたね。

 

ただ、ここで紹介するイメージ療法を全ておこない、継続する必要はありません。

この方法は今の自分にいい!と感じるものだけを残していってください。

違和感を感じるようでしたら、「こんな考えもあるんだ~」くらいにとどめておいてくださいね。

では、はじめてまいりましょう!

前田泰章

人は出来事に苦しんでいるわけではない

嫌な出来事に遭遇すれば、だれでも「つらい」「苦しい」「悲しい」といったネガティブな感情になります。けれども、ふつう感情は長く続きません。徐々に薄れていくものです。

それなのに、ネガティブな感情が長く続いたり、何度も繰り返し襲ってきたりするのであれば、その原因は「嫌な出来事」にあるのではありません。

 

多くの場合、脳の中でつくり上げた「イメージ」に原因があります。

 

たとえば、学生時代、告白して失恋した思い出が、青春のキラキラしたイメージとして記憶されていれば、思い出しても嫌な感情は起こらないでしょう。

逆に、胸がきゅんとしたり、温かい気持ちになったり、ポジティブな感情になると思います。

けれども、同じ失恋した思い出が、暗いどんよりした映像としてイメージされていたらどうでしょう。「つらい」「悲しい」という感情が沸き起こります。

 

このように、感情は「出来事→イメージ→感情」というプロセスで生まれ、どのような感情が生まれるかは、イメージに左右されます。

そのため、感情を無理に変えようとしてもうまくいきません。

 

そこで、マイナスなイメージをプラスのイメージに変換することで、感情をコントロールしようというのがイメージ療法です。

 

ここではイメージ療法のひとつ「NLP」をご紹介します。
NLPとは、Neuro Linguistic Programingの頭文字からつけられた名前で、日本語では「神経言語プログラミング」と呼ばれます。1970年代にカリフォルニア大学に在籍していたリチャード・バンドラーとジョン・グリンダーによって提唱された心理療法です。

 

NLPは、人の思考・行動パターンを変化させることで、感情のコントロールのほか、コミュニケーション力や目標達成力を高めたり、ビジョンの発見を助けたりする効果があると言われています。

実際、さまざまなスポーツ選手や世界的なビジネスマンが実践している手法です。

 

 

NLP① 当事者から傍観者へ

NLPを使った感情のコントロール法を5つ紹介します。1つ目は、当事者から、傍観者へイメージを変換する方法です。

 

同じ出来事でも、当時者として体験しているか、そばで見ているだけかで、受ける影響の大きさはまったく違います。イメージの世界でも同様です。ある出来事を自分が体験しているようにイメージすると感覚は強まり、傍観者としてイメージすれば感覚が弱まります。

 

傍観者になれば、嫌な出来事も「他人事」になるので、つらさが薄れます。自分の悩みも他人事にしてしまえばいいのです。

 

たとえば、過去に元夫からひどいDV(ドメスティック・バイオレンス)を受けていたことがトラウマになっている女性の場合。頭上にスクリーンを思い浮かべ、そのスクリーンにその当時の様子を映像として映します。

それを現在の自分が、映画のワンシーンとして見ているとイメージします。現実ではなく、映画の中のことだとイメージすることで、傍観者となることができ、つらい気持ちを和らげることができます。

 

NLP② 暗いから明るいへ

「明るい未来」「お先真っ暗」という言葉があるように、明るさは感情に大きな影響を与えます。「天気がいい日は気分も晴れ晴れしますが、天気が悪い日は、気持ちが暗くなる」ということは、多くの人が体験しているでしょう。

 

イメージの中の映像も、明るくすると、文字通り気分も明るくなります。

 

思い出すと気分が暗くなる出来事も、映像として思い出し、スマホで撮った写真を加工するように明るく変えてしまいましょう。

 

担任したクラスが学級崩壊した経験のある小学校教師のクライエントの場合は、今でも授業中に生徒が立ち歩いたり、おしゃべりをしたりしていて、まったく話を聞いてもらえなかったことを思い出してつらくなっていました。

そこで、そのつらかった場面を意識的に思い出し、その映像を徐々に明るくしていってもらいました。すると画面が光でいっぱいになり、真っ白に。

嫌な場面が見えなくなり、気持ちが少し楽になったそうです。

 

 

NLP③ 距離をとる(縁遠い人・親近感のある人)

縁を切りたいと思っている相手ほど、意識してしまいがちです。たびたびその人のことを考えて、気持ちが暗くなったり、苦しくなったりします。そんなときは、イメージの中で縁を切りたい相手の姿を、目に見えないくらい遠ざけていきましょう。

すると心の距離も離れていき、「縁遠く」なれます。相手のことがいちいち気にならなくなります。

 

反対に親しくなりたい相手は、イメージの中でその姿を自分に近づけることで、「親近感」が増します。

 

何をやっても揚げ足をとって、小言を言ってくる会社の先輩に困っている人の場合。

イメージのなかでその人を大砲の玉にくくりつけ、ドーンと遠くまで飛ばすと、気持ちがすっとしたそうです。遠ざける方法は、ロケットで飛ばしたり、急流に流したり、自分のやりやすいイメージでOKです。

 

 

NLP④音声を変える

同じ言葉でも、言い方によって受ける印象は大きく違ってきます。

たとえば、注意されるときに使う「こら!」という言葉。同じ言葉でも、大きな声で強く「こら!!」と言われたら怖いですが、やさしくやわらかな口調で「こ〜ら!」と言われたら、怖くないですし、逆に温かい気持ちにすらなるでしょう。

 

「やさしい声」は安心感と説得力があり、「大きな声」は恐怖を与えたり、士気を高めたりします。また、「低く小さな声」は不安をあおります。

 

実際、私たちはどんなとき、どのような喋り方をするのか考えてみると、安心しているときは、やさしい声で話しますし、驚いたときや怒っているときは大声を出します。不安で自信がないときは、低くボソボソと話すのではないでしょうか。

 

言葉と感情はリンクしているので、やさしい声で話せば、相手を安心させることができますし、自分自身も安心した気持ちになれます。

 

イメージの中でも、そこに出てくる登場人物の声のトーンや言い方を変えれば、受ける印象を大きく変えることができます。

 

たとえば、父親にいつも「ばかやろう!」と大声で怒鳴られ、それを思い出すたびにつらくなるというクライエントの場合。

怒鳴っている父親の姿をイメージし、そのなかで「ばかやろう!」という声を小さくしていって、やさしい口調へと変えていきます。すると、父親への恐怖心が和らげることに成功しました。

 

 

NLP⑤視点の位置を変える(目上の者・目下の者)

「目上の人、目下の者」という言葉があるように、視点の高さは自分と相手との上下関係を映し出します。

人に高いところから見下されると、威圧感を感じますし、反対に自分が高いところに立って人よりも視点が高くなると、気持ちも大きくなります。

 

たとえば、緊張症の人は人と話すとき少しあごをあげて目線を高くすると、気分が楽になります。
イメージの中だけでも目線を高くして相手を見下ろすようにすると、自分が相手と対等以上に感じられるようになり気分が楽になります。

自己評価が低い人などにおすすめです。

 

たとえば上司や取引先など、自分より立場が上の人と対面すると緊張して、思考が停止してしまう人の場合。

自分が相手を見下ろし、対話している映像をイメージすると、リラックスして話せるようになります。

 

ここまでNLPのやり方を5つご紹介しました。すぐに実践できるものばかりなので、気軽に実践してみてくださいね。

 

ただ中には、頭の中のイメージを変えようとしても、「現実に起こった出来事と違う」と違和感を感じてしまう人もいるでしょう。
そういう人はあまりこの方法は向いていないかもしれませんので、無理におこなう必要はありません。このような方法があることを知るだけでも、今後、何かしらの変化につながるはずです。

 

 

NLPを実践したEさんの事例

NLPは、いくつかの手法を複合的に利用しても効果があります。

Eさんの事例をご紹介します。

 

Eさんは、自分が経験したことではないにもかかわらず、2011年3月11日に起きた東北大震災の映像を思い出すと怖くて涙が止まらなくなるので困っていました。

家や人が津波にものすごい勢いで流されているイメージがしょっちゅう頭に浮かんできて、それをあたかもその場所で自分が目撃しているように感じてしまうというのです。

 

そこで、私は次のような手順でNLPを使ったイメージ療法を行ってもらいました。

①頭の上にスクリーンを思い浮かべ、そのスクリーンに津波のシーンを映し出してもらいます。それを映画のワンシーンとして自分が見ているとイメージし、当事者から傍観者へとイメージを変換します。

②海の水がすべて流れて、更地になったところをイメージしてもらいます。そこに花咲かじいさんがやってきて桜の種を大量にまきます。すると、たくさんの芽が出て成長し、立派な桜の木になります。

③桜が満開になって、スクリーンは桜のピンクでいっぱいになります。そのスクリーンをどんどん大きくしていきます。桜のほのかな香りも感じます。

④桜の木のまわりに小鳥や動物が集まってくる様子をイメージします。小鳥が枝に止まって、ちゅんちゅんとかわいらしい鳴き声を聞かせてくれます。桜の木の根元には猫が気持ちよさそうに日向ぼっこしています。そこにうさぎがぴょんぴょんとやってきます。

⑤画面からかわいい猫とうさぎが飛び出しきます。その猫とうさぎを抱っこしてあげて、そのふわふわやわらかい感触を感じます。

 
私が声かけ(ナビゲート)しながら、怖いイメージをどんどん明るく楽しいイメージに変換させていくことで、Eさんの気持ちはその場で楽になっていきました。

また、このようなイメージ療法を繰り返すことで、震災の映像を思い出すことも少なくなりました。

 

 

 

 

[参考文献]
西田文郎『一瞬で人生が変わる恩返しの法則』SBクリエイティブ
矢野惣一『癒されながら夢が叶う!問題解決セラピー』総合法令出版
前田泰章『「なんとなく生きづらい」がフッとなくなるノート』クロスメディア・パブリッシング